TD-1001R開発物語11 TDフロントフェイシャーの開発
2004年3月8日、早速エアロパーツを作成するため、ミーティングを設定しました。
『TD-1001R』のエクステリアはフロントバンパーとリヤスポイラーのみ変更で行く予定でした。5年経ったから今だからこそ話せる話をしたいと思います。
立花(T)さんの紹介で、私達はエアロパーツメーカー『トリム』を紹介してもらいます。TDを製作していくに当たっては、多くの協力会社の存在が不可欠です。ここはメーカー系チューナーのパーツなどを手がけるメーカーで、通常はディーテクニックのような小さな一般のショップの仕事はあまり行わないような会社でした。しかし、立花さんの紹介もあり、時代の流れもありといったことで、100台規模の小さなビジネスにも対応してくれることとなりました。
最初のミーティングに私と立花さん、先方の社長さんと小川さんが参加しました。この小川さんこそ、TD-1001Rのデザインを完成させたモデラーなのです。彼の腕前は素晴らしく、絶妙な曲面を削りだします。彼の執念とも言える最後のデザイン熟成がなくてはTD-1001Rの表情は完成することはなかったでしょう。彼はTD-1001Rのフロントフェイシャーを最後の作品にこの会社を去ります。そのギリギリのタイミングにTDは巡り会い、生まれたことになるのです。
ミーティングが始まりました。
立花さん(T):「彼は出来君というんだけどね。とても頑張っていてね。応援したいと思っているんだ。このデザインなんだけど、出来るかな?」
みんな:「・・・・・」。
Tさん:「どうかね、小川君!」
小川(O)さん:「まあ、できないことはないですけど」
そこに置かれた絵は、間違いなくTさんが新たに書いたNBのフロントの絵でした。しかし、それはあのMPSにかなり近いデザインのもので、私はそれに少々戸惑っていました。「MPSデザインは200馬力、2000ccのモデルをイメージしたワイルドなもの。俺が表現したいのはそちらではなく、160馬力、1600cc、990kgのスーパーライトウェイトカー。これまでにない軽快で引き締まったデザインにしたい。それにMPSは立花さんのデザインではあるが彼がマツダに在籍していたときのもので、個人のものではない(と私は考えました)。これは少し違うけど、MPSのイメージが強い。立花さんにデザインし直してもらいたい。もちろん、気分良く、彼の意思でそうしてもらいたい。」そう考えていました。
今のTDのデザインに近いものを想像していただければと思いますが、ライト部分の造形が非常に難しく、それをどうするかに議題は集中しました。当初、ヘッドライトは単体で用意される予定でしたが、これでは非常にコストがかかるのと、重量があり、オーバーハングの軽量化が厳しくなります。パーツの管理も大変です。そこで立花さんから斬新なアイデアが飛び出す。
T:「ライトユニットのカバーとバンパーを一体にできないかな?ライトはボディに固定してさ、ボディカラーと同じところだけバンパーと一緒にして、その上にアクリルのカバーをするように設計して、1ピースで型を抜いてよ。トリムなら出来るでしょう。」、
Oさん:「なかなか難しいですよ。ライトステーにも物凄い精度と剛性を持たせなくてはいけないし、アクリルカバー(ポリカーボネイド)もそう。結構コストがかかるし、技術的には・・・ん、技術的にはうちの中で出来ますね。」、
D:「え、出来るんですか!?それは凄い」
私は本当に驚いた。その場にいて、絵をみていないとわからないと思いますが、それはもう1mmとか2mm、とかそういう世界であって、通常のフロントバンパーを作るような精度じゃ出来ない。
Oさん:「メーカー系の仕事は規則などでクリアランス5mm以上でやってますけど、ディーテクニックさんのならチャレンジしてみましょう。ライト単体で作った場合とライトカバー一体型のバンパーにして、ライトステーの精度を追い込んだ見積りを出します。だいたいこのくらいです。」
T:「さあ、出来君、あとはやるかやらないかだな。」、
D:「もちろん、やります!」
この立花さんからの紹介がなければ、TDフロントフェイシャーは生まれなかった。見てみて「ああ良く出来てるな。」と思うのは簡単。しかし、あのアイデアと造形はなかなか成立できるものではない。『さすがの立花さん、さすがのトリムだ!』と強く思った。やっぱり格が違う。」と感じたまま、当時の日記にある。
出来利弘
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