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2009年7月15日 (水)

TD-1001R開発物語9 新車ベースのコンプリートカーの提案

2004年2月25日、私は『NB6Cロードスターの新車をベースとしたコンプリートカー計画DT-01R』を提案しました。ただ単にデモカーとして見せるのではなく、もうそのまま自動車メーカーが売っているかのような形として販売するのです。
そこには使命感のようなもの『次の若い世代に受け継いで行くべきスポーツカーのあり方を提案する』という想いがありました。このディーテクニックがレース活動、チューニングショップ活動を通じて得たノウハウで創り上げる予定のコンプリートカー、NB6Cロードスターによって、もしかすると『立花さんにメディアへもう一度出てもらい、若い世代に知ってもらう』という目標も達成できるかもしれない!と、そんなことも頭の中に浮かんできていました。

私が若い頃は新車で出ているものと中古車をベースにパーツを着けたり、コンプリートして販売しているものを分けてみていました。新車こそ全てであり、それが買えない時にやむを得ず、中古車で買える車を探すのです。雑誌で見るのはほとんど新車の記事とその詳細でした。そして、当然見るのは車種ごとのムック本ではなく、総合新車情報のあるカー雑誌。そこにはチューニングカーが取り上げられることは稀です。私は『新車をベースとしたコンプリートカー』として提案することで、その話題性、意外性から、一般的なカー雑誌で取り上げられる可能性があるのではないかと考えました。この方法しか『若いクルマ好き』に発見される方法はないのではないかと。新車で提案すれば全てのカー雑誌に登場できるかもしれません。しかし、そうなってくると今までの基本的チューニングカーコンセプトとは異なってきます。『明確に何を訴えたいかけたいコンセプト』が非常に重要になってくるのです。
立花さんは、「そりゃおもしろいね。中古車ベースでもいいんじゃないの?でも出来君が本当にやるなら協力するし、紹介などするぞ。」と言ってくれました。
新車で提案するメリットは大きい。新しい価値観を提案できる。
立花さんは続けます「もしやるなら見た目が変わっていなくちゃダメだ。フロントバンパーとライトユニットを違うものにして、ノーマルのNBと差別化しなきゃ。そうしないといくら良いエンジン、シャシーでもアピールできないぞ!」。
私は「中身が本物ならきっと解る人には解ってもらえる!」と考えていました。しかし、大先輩、立花さんの教えを何度も繰り返し考えるうちに思い直します。「そうかパッと見て、凄くないと乗ってみようと思わない。乗って凄いとさらに感激、このクルマは良いとなる。見た目の第一印象で、ノーマルとは違うことをアピールしないと『変わっていないクルマ』とう先入観が先に立つ。同じ印象で乗れば、普通の人は同じようなものを想像しながら乗ってしまう。見た目、第一印象は実はとても大切なんだ!」と思うようになりました。『普通に見えて意外に良い』は商品として難しい。『見た目の良いし、中身も凄い!』は感動すら覚える。欲しくなる。エクステリア、インテリア、エンジン、サスペンション、トータルのバランスがきちんと取れていて、エンジンがちょっと想像以上であることが、刺激的なスポーツカーなのではないかと考えました。

私は立花さんが、ディーテクニックの店内の改装案のために作ってくれた企画書を見直しました。的確な表現を使ったシンプルな企画は見ていてとても気持ち良いものでした。私はこの書式に従って、A4の紙1枚の『ディーテクニックのNB6C改企画案』を作成し、立花さんに提出、「この企画に関するご意見を是非ください」としました。最初の企画書に私が書いた言葉は『世界に冠たるスポーツカーを!』でした。TD最終案と比較するとちょっと攻撃的な文章。990kg以下の車重とすることやNB8Cを上回るサーキット性能を出すなど書いてありました。販売計画やその進め方についてもシンプルにまとめたものでした。

企画書を見た広島の立花さんから連絡が入りました。

T:「面白い企画だと思います。しかし、ディーラーから新車を買ってきて製作はとてもコストがかかるね。いろいろと検討しなくてはならないだろうなあ。出来君、採算性評価表を作らなくちゃいけないなあ。」

D:「採算性評価表?すみません、それ作ったことないのですが、どんなものでしょうか。」

私は彼からアドバイスを受けてそれを作成しました。コンプリートカー製作にかかるコストを割り出すもので、パーツや工賃の原価を調べ、型を起こすものはそれを生産を予定する台数で割って価格を割り出し、それを合算することで、コストを割り出すものです。一台あたりどの程度の利益が上がるか、そして何台生産するとどの程度の利益かを計算で割り出せます。これはとても勉強になりました。『お金のためじゃなくて、夢のためにやっているんだ!』という気持ちはありましたが、これをしっかり計算した上で可能な限り夢を実現することが大切だと思いました。
作品』と『商品』を両立させるため、彼はいつもここをきちんと計算し、その中で『作品寄り』、『商品寄り』のクルマを創ってきたのだと理解しました。彼はいつも冷静で、「作品よりにしすぎないように!」と私に注意してくれました。さすがはマツダの技術者、この企画書、採算性評価表の作り方の裏にある彼の思想が、バランス感覚の優れた作品を創ってきた基礎にあると確信しました。それはまるで、『きちんとした直進性をもっている上に、クイックなハンドリングを持つロードスターという車』そのものでした。


ディーテクニックNB6C改企画案』と書いたパーツの計算リストにはこうある。

エンジン・ピストン、カムなど  \200,000
K&N フィルターラムチャージャー  \58,000
マキシムエキマニ NB6C用 \168,000
レーシングビート・マフラー  \68,000
RAYS CE28 7J-15 off+28  \156,000
BS RE-01R 195/50-15  \56,000
スプリング ¥30,000
ダンパー ¥76,000
エスケレート・CKバケットシート  \246,000
M2タイプの砲弾型ミラー  \24,000
フロントバンパー  \100,000
ランプユニット  \100,000
合        計  \1,282,000

これが予想されるパーツのみの定価合計でした。スプリング、ダンパーは固定式タイプを採用し、オリジナルのセットを50台分オーダーした場合を想定したもの。KONIダンパー+レーシングビート製スプリング、PCR製アルミ車高調整サスキットも検討していました。この企画はチューニングデモカーとして考えていたのですが、NB6Cのために製作するオリジナルのサスペンションやエキマニ、マフラーなどかなりのリスクあり、どのパーツメーカーも製作が困難でした。オリジナルのホイールカラーなども同じくです。30台~50台をまとめて製作することが求められたのです。しかし様々なコストダウンを試みてみても価格は300万円を超えてしまいそうです。見た目はフロントバンパー交換しているだけでも中身を理想的にすると386万4千円という売価になってしまいます。参考までにここまでのやり方で発売になったTD-1001Rを製作すると約550万円以上の定価設定となってしまいます(実際の販売価格は340万円)。サイド、リヤ、トランク、さらに内装にも手が加えられているからです。やっと動き出しそうな新車ベースのコンプリートカー計画。しかし、課題は多く、解決方法はなかなか見つかりませんでした。


出来利弘

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