M2 1001 研究 M2と立花啓毅
M2 1001
M2 1001 1991年12月発表、1992年3月発売。
株式会社M2(エム・ツー)から発売された300台限定車。
発売当時の価格は340万円(消費税別)だった。
詳細はオーナーズクラブCLUB M2のサイトへ
確か2番めのマツダという意味だったと記憶しているが、マツダの子会社として誕生したM2。そこから市販車第1号として、限定販売されたのが、M2 1001でした。発売当時は初代ユーノスロードスター1600(NA6CE)の人気絶頂期。それをベースにメーカー直系のM2スタッフがプロデュースしたチューンドカーが発売となったのだからもう大変。応募は限定数を大きく上回り、抽選確立は7倍にも達したと言われていた。
当時の資料を見てみると
「M2から最初に発表する1001は、「走るときめき」の提案です。飾らない風貌に潜在能力を感じ、わずか数メートル転がした瞬間に、別物であることがご理解いただけるものと思います。このM2 1001を御すためには、いささかの鍛えも必要かと思いますが、これもスポーツカーオーナーだけの悦楽であろうと考えて居ります。」
とあります。この「M2 1001」の開発、デザイン、セッティング含め、全体のまとめ役を行ったのが、立花啓毅さんでした。当時、立花さんと言えば、マツダ RX-7やファミリアなどシャシー実験部のリーダーとして、その技術力とカリスマ性のあるコメントで有名でカー雑誌にもよく登場されていました。私は特にサバンナRX-7(FC3S)アンフィ二の新車発表時の雑誌記事で、「アンフィニを創った男たち3人組」として、小早川隆治さん、貴島孝雄さんと一緒にインタビューを受けていたことを思い出します。今思うと夢の組み合わせですね。 そんな立花さんのプロデュースした「M2 1001」は古き佳きブリティッシュライトウェイトスポーツを意識しながらも日本製らしい信頼性ときめ細やかさがプラスされ、さらに時代背景に合った新しい走りの技術も組み込んだ「夢のクラブマンレーサー」に仕上がっていました。エンジン、サスペンションだけでなく、内装、外装など直接性能に関係のない部分にまで手を加え、トータルバランスを考えながらチューンしたこのクルマの成り立ちはそれまでの日本車にはない価値観に溢れていました。しかも購入した後のドライビングレッスンや会報誌の発行、オーナーとの交流など、このクルマを通じての人と人との交流など、ソフト面に関しても充実していた。この部分を当時サポートしてくれていたのは、現在RCOJの代表、水落正典さんでした。M2の活動に関してはいつか詳細をご存知のスタッフにインタビューしてみたいです。
M2 1001は今見ても「こんなにスペシャルでいいのか?」と思うほど凝りに凝った創りになっている。いかにも「立花さんスペシャル」らしいマシンだ。詳細を上げるとこのブログでも30回以上連載しないと無理なので、大まかに見ていきます(いつか必ず研究報告します!)
まず、エンジンにライトチューンが施されています。出力がノーマルに比較して、10psアップの130ps/6500rpm、トルクは1.5kg-mアップの15.1/5500rpmとなっていた。256度のハイカムシャフトとフラット形状のハイコンプピストンが採用され、ピストンクリアランスも広めの設定、10.67まで圧縮比が上げられ、職人によるポート研磨も行われていました。カムカバーはバフがけされ、エキゾーストマニホールドもオリジナルの4-2-1タイプに変更、マフラーもオリジナルに変更されていました。フライホイールも純正に対して10%軽量化、エアフロメーターも大容量タイプ、ECUも専用にチューンされたエンジンはとにかくパンチがあり、「2000ccあるのではないか?」と錯覚するほど、トルクが太っていました。ラジエターも容量の大きなものに変更されているなど抜かりないものでした。この合法で乗れるチューンドエンジンが手に入るだけでもこの1001を買う意味があると言えたのではないでしょうか。間違いなく、このエンジンは私たちに夢を与えてくれました。「タコ足って何?変えるの?」まだロードスターチューンの現場はそんな雰囲気があったと記憶しています。 シャシーはM2専用のスペシャル。スプリングは約10mmダウンで20%ほどハードなもの。SHOWA製のダンパーも伸び縮みともの締め上げられていましたが、驚くほどハードではなく、むしろしなやかなものでした。スタビライザーも前後強化タイプとなっていて、サスアームブッシュも一部強化品、アライメントセッティングもスペシャルデータでした。タイヤは「ダンロップ フォーミュラM2 CB-01」という195/50-15の15インチのタイヤが採用されていました。ホイールはパナスポーツ・プロラリー。6J-15off+45。タイヤの名前の「CB-01」はクラブマン01号車の意味?それより、当時、ダンロップから「FPORMULA M2 」というタイヤ名のブランドが発売されていたことに驚く。もちろん偶然なのでしょうが、なぜか運命を感じますね。一部ショップデモカーなどに15インチはあったものの当時、「ロードスター走り系は14インチ」というイメージが強く、15インチの標準採用は衝撃でした。またローダウンサスも公認を取ることが難しく、標準でローダウンした新車が購入できることも驚きでした(この後、「強度検討書」をつけることで公認をとることが可能になり、後に9cmの車高を確保し、バネが遊ばなければ車検をパスできるようになりました)。デフにはマツダスピード製機械式2ウェイLSDが標準で装着され、そこには冷却用のダクトが導かれていました。フロントサスタワーバー、アルミ製の4点式ロールバーが装着された剛性感溢れるハンドリング。パワーステアリング、パワーウインド、エアコンもなく、非常にスパルタン!当時、貫通式のロールバーは抵抗あった中、ロードスターといえば、ファッションバー装着のクルマが多かったと記憶しています。M2以後は本格的ロールバー装着車両が増えました。とても影響力が大きかったのです。
外装はCIBIE製フォグランプをビルトインしたM2 1001オリジナルバンパー。リヤスポイラーはBタイプを装着。ボディカラーは専用色のブルーブラックが採用された。砲弾型のドアミラーはアルミ製ヘラ絞り!助手席側はオフセットして装着し、視認性を向上させるなど細かい配慮が行き届いている。その後ろにはシリアルプレートを装着。300台の1台である証です。フィラーキャップ(ガソリンのふた)もバイクもびっくりなアルミ製で凝った作りになっていました。マツダのエンブレムは取り払われ、とてもシンプル。リヤにM2 1001のアルミ製エンブレムのみだった。
内装はRX-7アンフィニⅣと同じグレーの生地のフルバケットタイプ。アルミ製ロールバーには本革風レザーがまかれていました。センターコンソールを取り払い、パイルカーペットに本革のシフトブーツをアルミのリングでがっちり固定、アルミのシフトノブとサイドグリップが光っていました。ドアの内張りもノーマルと異なるもので、ステッチがあり、質間の良いものになっていました。シンプルなデザインで、鋭い形状のアルミのインナーハンドル、手回しのウインドレギュレータもアルミ製、運転席ドアには本革のドアバック(なんと5万円!)が装着されていました。メーターセットはスペシャル!タコメータとスピードメータが逆で内側によったタイプ。アルミ盤に縮み塗装が施されたものにビルトインされていました。まるでバイクのメーターのようです。メッキリングもより強調されていました。センターパネルも縮み塗装されたフラットなパネルに本革のふち取りがされ、メーターフードも本革張りと本当にきめ細かい。ステアリングはバフ仕上げのMOMO。ホーンボタンもオリジナル。ブリティッシュライトウェイトを彷彿とさせるデザインで統一されていました。
フロントバンパーの延長、車高の変更などにより、全長3980mm、全幅1675mm、全高1225mm、車重960kg。(車両重量にはエアコンは含まず。)
M2 1001が残した功績は計り知れません。ロードスターのチューニングのお手本となったパーツ、思想も多いと思います。立花さんの示す「ライトチューンのあるべき姿」は個性も強く、特にハンドリングはかなりスパルタンな特性となっていたが、それだけに一度乗ったら忘れられない味となっていました。「今日はM2 1001に乗るぞ!」と構えて乗り込まないとスタートできない気持ちになるクルマ。古き佳きブリティッシュライトウェイトの雰囲気を1990年代の信頼性の中で味わいたいと思っていたスポーツカーファンにはたまらないものでした。しかし、当時のカー雑誌を見ても「気軽に誰でも乗れる良さ、親しみやすさ、やさしさ」といった部分にロードスターの魅力を感じていたファンにはちょっと辛口すぎるとの評価もよく聞きました。ひとつの方向性に特化して表現したM2 1001。名前からロードスターが消えていることも納得できるほど、全く違った味をもったスパルタンマシンでした。
このM2 1001を知らずに立花啓毅、TD-1001Rは語れない。
<SPECIFICATION>
主要諸元 | ユーノスロードスターベース車 | M2 1001 |
ボディタイプ | 2ドアオープン | ← |
車名・形式 | ユーノス・E-NA6CE | ユーノス・E-NA6CE改 |
エンジン | B6-ZE(RS) | ← |
変速機形式・変速段数 | マニュアル5段 | ← |
■寸法・重量 | ||
全長mm | 3970 | 3980 |
全幅mm | 1675 | ← |
全高mm | 1235 | 1225 |
室内長mm | 935 | ← |
室内幅mm | 1320 | ← |
室内高mm | 1025(幌装着時) | ← |
ホイールベースmm | 2265 | ← |
トレッド・前mm | 1405 | ← |
トレッド・後mm | 1420 | ← |
最低地上高mm | 140 | 100 |
車両重量 kg | 940 | 960 |
乗車定員 名 | 2 | ← |
■性能 | ||
最小回転半径 m | 4.6 | ← |
制動停止距離(初速50km/h)m | 12.0 | ← |
10モード燃費 km/l | 12.2 | 10.5 |
60km/h定地燃費 km/l | 18.5 | 19.0 |
■エンジン | ||
形式 | B6-ZE(RS) | B6-ZE(RS)改 |
種類 | 水冷直列4気筒DOHC | ← |
総排気量 cc | 1597 | ← |
内径×行程 mm | 78.0×83.6 | ← |
圧縮比 | 9.4 | 10.67 |
最高出力(ネット)ps/rpm | 120/6500 | 130/6500 |
最大トルク kg-m/rpm | 14.0/5500 | 15.1/5500 |
燃料供給装置 | 電子制御燃料噴射装置 | ← |
燃料およびタンク容量 L | 無鉛レギュラーガソリン・45 | 無鉛プレミアムガソリン・45 |
■駆動装置 | ||
クラッチ形式 | 乾式単板ダイヤフラム式 | |
変速比 第1速 | 3.136 | ← |
第2速 | 1.888 | ← |
第3速 | 1.330 | ← |
第4速 | 1.000 | ← |
第5速 | 0.814 | ← |
後 退 | 3.758 | ← |
減速比 | 4.300 | ← |
■操向装置 | ||
ギア形式 | ラック&ピニオン | ← |
ギアレシオ | 15:1 | 18:1 |
倍力装置形式 | - | ← |
■サスペンション | ||
サスペンション・前後 | ダブルウィッシュボーン式 | ← |
ショックアブソーバー・前後 | 筒型複動式 | ← |
スタビライザー・前後 | トーションバー式 | ← |
■制動装置 | ||
主ブレーキ形式・前 | ベンチレーテッドディスク | ← |
主ブレーキ形式・後 | ソリッドディスク | ← |
倍力装置形式 | 8インチ径真空倍力式 | ← |
■タイヤ&ホイール | ||
タイヤ・前後 | 185/60R14 82H | 195/50R15 81V |
ホイール・前後 | 14×5.5JJ | 15×6JJ |
専用装備 | |
■エクステリア | |
フロントスポイラー | フォグランプ内臓フロントエアダムスポイラー |
リアスポイラー | Bタイプ |
ロールバー | アルミ製4点式ロールバー(革製パッド付) |
フィラーキャップ | アルミ製(キー付) |
ドアミラー | アルミ製砲弾型 |
リアマッドフラップ | リアマッドフラッププロテクター |
ロッカーパネルピッチ塗装 | 削除 |
■インテリア | |
メーター | 独立型メーター |
メーターフード | 革張り |
センターコンソール | 革張り |
シフトノブ | アルミ製 |
パーキングブレーキレバー | アルミ製 |
ウィンドレギュレーターハンドル | アルミ製 |
インナーハンドル | アルミ製 |
ドアプルハンドル | 本革製 |
ステアリングホイール | MOMO製本皮 |
シート | オリジナルバケットシート |
ニーパッド | オリジナル |
本革製ドアバッグ | オリジナル |
ペダルセット&フットレスト | アルミ製 |
ドアトリム | オリジナル |
キーセット | オリジナル |
センターコンソール | センターコンソール無し |
■エンジン | |
ヘッドカバー | バフ掛け(バフ掛けオイルフィラーキャップ付) |
フライホイール | 軽量フライホイール |
ピストン | ハイコンプピストン |
カム | ハイカム |
エキゾーストマニホールド | ステンレス製等長たこ足(4-2-1タイプ) |
マフラー | ステンレス製(HKS) |
■メカニズム | |
コイルスプリング(前後) | 専用 |
ダンパー(前後) | 専用 |
ロアアームブッシュ(前後) | 専用 |
マウンティングラバー(前後) | 専用 |
フロントサスタワーバー | アルミ製 |
LSD | 機械式2WAY(冷却用ダクト付) |
■タイヤ&ホイール | |
タイヤ | ダンロップ製D40M2・CB-01 |
ホイール | 15×6JJ パナスポーツ・プロラリー |
■ボディカラー | |
ダークブルー |
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