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2009年2月 4日 (水)

Star Mazda参戦への道 15 スターマツダマシン初ドライブ

_hop9896 そして、いよいよ走行開始となった。スターターを回し、エンジンをかける。RENESISロータリーエンジンは基本的にノーマルながら、吸気はラム圧がかかる構造でこれをMOTEC制御とすることで250馬力を得ている。これを約480kgの車重のマシンに搭載するのだから、すごい。0→100km/hまでの加速は約2.8秒だ。

ドライビングコーチのリッチーが私をツーリングカーの助手席に乗せ、コースをレクチャーしてくれた。なんと!インディドライバーによる同乗走行だ!!リッチーはいきなり全開、片手運転で私にコーチしてくれた。ライン取りはもちろん、ギヤポジション、気をつけることなど。そして時にはコースをバックしてクルマを停めて、説明してくれた。ビデオの巻き戻しのようにして。「こんなふうにしてて大丈夫なのか?」誰か来ないのか?そう聞くと「今日は貸切なんだよ。」「えー!!貸切って、あの貸切?1日貸しきっていて、今日の走行は2時間ないの?」「そう、安全に走れるからね。」「・・・」なんという待遇か、私がコースを走るときはリッチーがコースの5箇所を飛び回り、走りをチェックしてくれるという。頑張らなくてはもったいない。ところが、最終的にこの日走行したのは約15周。3周くらいしてはピットインを繰り返し、マシンがちゃんと動くか、機能しているかをチェックした。私はマシンに慣れることを目標に走行すると決めた。いよいよ走行開始だ。

初めての左足ブレーキによるフォーミュラ、初めての6速シーケンシャルミッションのギヤを1速に入れる。フォーミュラレースマシンのフライホイールは極端に軽く、回転を合わせるのが難しい。発進は約4000回転でミート。半クラッチは負担となるので一瞬だけ使い、一気につなぎ、ホイールスピンさせスタートさせる。この軽い車重に対しては充分過ぎるほどのトルクでピットロードから、グイグイマシンを押し出す。コースインし、スロットルを踏み込むと、強烈な加速G。もちろん、もっと凄いパワーのマシンも乗ったことはあるが、予想以上の加速にちょっと驚いた。この軽い車体にロータリーエンジンの組合わせは初めて。昔乗っていたF-3が170馬力だったことに比べると実に70馬力も違う。フォーミュラの70馬力の差は大きい。5000、6000、7000と回転が一気に上昇し、レブリミットの8400rpmを迎える。2速、3速と高いギヤになるほどクロスギヤとなっていて、シフトアップ時のトルクの落ち込みが小さい、高回転のパワーを常に使いきりながらの走行は続く。イヤープラグなしではドライブできないほどの音量で高回転ロータリーサウンドを奏でる。ステアリング、ペダル類も予想以上に重く、かなり体力が必要。ちょうどレーシングカートのトップクラスのコーナリングに似ている。しかし、カーボンモノコックと最新のエアロダイナミクスを持ち合わせたコーナリングはさらに凄く、高速コーナーではそのダウンフォースの強さに驚いた。近年、安全性重視のため、ダウンフォースを減らす方向にあり、F-3、フォーミュラニッポンなども小さめの前後ウイングで、床面はステップボトムとなっているが、このスターマツダは大きな前後のウイングと、床面はフラットボトムである。そのため、生み出されるダウンフォースはこのクラスのフィーミュラとしては大きめ。トレッドも広め、昔のF-1に使用されていたBBSホイールをベースとしているホイールに太めのグッドイヤー製スリックタイヤを装着していて、コーナリング性能は抜群。そしてブレーキ性能も強烈。長いストレートから飛び込むヘアピンコーナーでは、奥まで飛び込んで間に合う。例えばRX-8ではこの180km/hくらい出ている状態からのフルブレーキングし、ブレーキを緩めつつターンインするこのコーナーで、スターマツダのマシンはRX-8がブレーキを緩め始める場所までアクセル全開で飛び込めるのだ。強烈なダウンフォースによって、6速全開から最初のブレーキングで一気に、3速ギヤを落とせるフルブレーキングで6→3速へのシフトダウンは約2秒程度か。スピードでいうと約180km/h→80km/hへの減速となる。ターンインは鋭く、一瞬で終わる。コーナーの最低維持速度も高く、そして、立ち上がりのトラクション性能も抜群だ。壁にぶつかって跳ね返るようなコーナリングはレーシングカートの感覚に近い。このスターマツダこれだけの性能でありながら、乗った瞬間から即全開シフトアップで走行できた。これはロータリーエンジンRENESISの特性によるところが大きい。ロータリーはレシプロに比べてトルクカーブが綺麗で直線的。シフトアップ時も姿勢を大きくみだすことなく、マシンの安定性を維持できる特徴がある。これがミッドシップで本来シビアなはずのフォーミュラと見事にマッチングし、理想に近い乗りやすさとなっている。少なくともF-3と比較して、シフトアップ、ダウン時の駆動輪のトルク変動は少なく、それほどアクセルワークに気を使わなくてもスピンしそうになったりはしない。シフトアップもそうだが、シフトダウン時の安定性が素晴らしい。これだけ安定していれば、いろんなラインでどこまででも突っ込んでいける。その上でのコントロール性も高い。この素晴らしい操縦性があってこそ、スターマツダのレースが熱く激しいのだと解った。スタートからファイナルラップまで、入れ替わる順位、テールtoノーズ、サイドbyサイドで見るものを魅了するこのレースは「ロータリー」だからこそ成立しているものなのだと確信する。世界中のロータリーファンに是非、一度このスターマツダ経験してほしいものだ。500kgの車重にはRENESISのトルク、パワーは充分過ぎるものであり、ドライサンプ化でより低重心となったエンジン搭載位置と合わせて、理想的マシンになっている。官能的なサウンドのロータリーエンジンは本体が全くノーマルだとは信じられない。ロータリーの新たな可能性を感じる走りだった。

オレ?オレはいきなり腕がパンパン!ステアリングの重いこと重いこと。ちょっとビックリした。普通のクルマのドアが閉められないくらい、サイドブレーキが引けないくらい、激しい筋肉痛に襲われた。降りた直後にこれはかなり凄い。今思うとシートポジションから腕が遠く伸びていたかと思う。しかし、この初日は厳しかった。普段使わない方向から筋肉を使わなくてはいけなかった。これは難しいかと思ったがこの週末のレースまでには適応してしまうのだから、自分のことながら、人間の体ってすごい。3日間で腕周りは2cm以上太くなり、首も太くなり、持っていった服が着れないほど筋肉が増えていた。
走りの感想は、意外にも冷静で、「なかなかマシンのポテンシャルがあるなあ」というものだけだった。乗れて楽しい!よりもこれからやらなくてはいけない事がはっきりしているので、ここを順調にこなしてInfineonへとしか考えていなかった。いい意味で緊張もなかった。確かに変です、12年ぶりでさらにステップアップしたマシンなのにおかしい。しかし、このフォーミュラで走っている状態が自分にとって普通であり、これまでそれと違う状態の中で物凄いストレスを抱えていたのだと解った。贅沢だと言われれば全くその通りなのだが、本当のことだから仕方がない。たくさんの人に支えられて、ここまで来たから、「みんなに感謝し、しっかり走りたい。」「このチャンスをきちんと活かす。」ことに集中した。この15周のテストがあったことが、Infineonでとても役に立ったとは言うまでもない。それにしても1日貸し切ってこれでけではもったいない気が・・・。さすがはアメリカ、スケールが違う。



レーシングドライバー 出来 利弘

 

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